ここでは日本・中国・ロシアを除いたアジア全域で生まれた武術について紹介する。
南アジアでは、紀元前からインド・アフガニスタン周辺で武術が盛んに行われており、後に中国や東南アジアの武術に大きな影響を与えている。
東南アジアでは、熱帯雨林や屋内などの狭いスペースで闘うため、小型武器がよく用いられる。
中東・近東では古式レスリングと曲刀を使った剣舞などが知られている。
ボビナム
ボビナムは1938年、ベトナムで創始された武術である。
ベトナムの伝統的武術に、中国拳法、レスリング、キックボクシングなどの要素をミックスしており、現在ベトナムでは誰もが知っている国民的な武道となっている。
相手に飛びついてカニばさみをかけるアクロバットな技「ドンチャン」が特徴的
ボアボム
ボアボムはチベットに伝わる古武術である。
古代チベット王朝にルーツを持ち、僧侶が修める護身術として伝えられてきた。瞑想やヨガの呼吸法を取り入れるなどインド武術に近い内容となっている。
クンフー・トーア
クンフー・トーアは1960年代、イランの軍人によって開発された武術である。
中国拳法と空手、ヨガを組み合わせてつくられ、軍隊でも導入された。イラン革命以降は政府により禁止されていたが、現在ではイランで最もポピュラーな武術となっている。
動作の最後に強いアクセントをつけるショックと呼ばれる技術により、強烈な打撃を与えることができる
テコンドー
テコンドーは韓国の格闘技。
松涛館空手を源流としているが、足技を非常に重視しており独自の発達を遂げている。
ルール上、蹴りの得点を高くしており、脚での攻防が発達していった。遠い間合いから体当たりするように放たれる蹴りや、密着した状態からのカカト落としなど多彩な蹴り技をもち「足のボクシング」との異名もある。
ボッカタオ
ボッカタオはカンボジアに伝わる伝統武術である。
野生の動物から身を守るための武器術だったものが、9世紀の古代アンコール王朝の戦士たちにより武術として体系化された。その技はアンコール遺跡の壁画にも多数残されている。
カンボジアがベトナムに占領されたポルポト政権の時代(1975~1979年)には武術を全面的に禁止され、その技は失伝したかに見えたが、2001年からの復興活動により国民的武術といわれるまでに復活を遂げた。
ムエタイのように肘や膝での攻撃を多用し、その他に関節技、寝技、槍や棒などの武器術も備えている
シランバム
シランバムは紀元前4世紀から南インドに伝わる、棒術を中心とした古武術。
竹や籐の棒が主要な兵器だが、それ以外にも鎌やムチなどさまざまな武器が使われる。また素手での格闘技術はクトゥ・バリサイといい、動物の動きを取り入れている