ムエタイ

ムエタイ(ムエイタイ)(Muay Thai)はタイで発祥した格闘技である。

強力な打撃とディフェンステクニックから立ち技最強と称される。

ムエタイの成り立ち

古式ムエタイの発祥

暖かく、肥沃で常緑の土地であるシャム(現在のタイ)の住人達は、土地を奪おうと中国からやってくる部族たちとの争いのなかで格闘術を産み出した。これが古式ムエタイ(ムエボーラン)の原型であると考えられる。

9世紀にはコンゲ川沿いに最初の町ができ、貿易をおこなうことで豊かになっていく。しかしそのなかでも戦争は続き、戦いの中で 蹴りや、拳、ひじ、ひざ、すねを使った格闘術が練り上げられ、全ての住民たちの自衛の手段となった。

13世紀に誕生したスコータイ王朝でも戦争は盛んに行われ、兵士たちの格闘技術として古式ムエタイは磨かれていった。若者は皆、一人前になるための修業として古式ムエタイを習得し、王や王族でさえその例外ではなかった。

14世紀に誕生したアユタヤ王朝でも古式ムエタイは重要とされた。王の親衛隊は特に高度な技術を完成させており、これが近代ムエタイ技術のルーツとされている。

17世紀は平和な時代となり、古式ムエタイはプロスポーツとして試合が行われた。村同士で競争し、試合は賭けの対象にされた。

1767年、アユタヤ王朝はビルマ軍の攻撃によって終焉を迎えた。
このときビルマに捕らえられ奴隷拳闘士となったナヒ・カノム・トムという古式ムエタイ戦士は、ビルマ精鋭の拳法家12人を打ち負かして自由の身となり、シャムへと帰った。これがタイ国外で初めてのムエタイの試合となった。
この活躍を称えられ、ナヒ・カノムは“ムエタイの父”もしくは“ムエタイの創始者”の名誉を与えられた。

近代ムエタイの誕生

1868年にチャクリー王朝の王位についたラマ5世はムエタイの普及活動を精力的に行った。
ムエタイの学校や施設を作り、ムエタイの試合を主催し、さらにムエタイの学校や施設を数多く作り、学校教育や軍隊教育にムエタイを取り入れた。これによりムエタイの技術はさらに発展した。

1921年にはムエタイの大規模トーナメントが開催され、タイのムエタイ選手と周辺諸外国の選手が戦ったが、このとき初めてリングの上で試合が行われた。
その後、ボクシングのようなグローブを使うようになり、体重制などが導入され、現在競技として行われている近代ムエタイの形となった。

1939年、シャム王国から国名をタイに変更したことで、「ムエタイ」(タイ式格闘) の名が付けられ、タイの国技として指定された。

現在、ムエタイの試合は人気賭博として年間を通して行われている。
しかしムエタイは貧困層のスポーツとされ、選手の地位はけして高くない。
多くの若者が貧困を脱出するため幼い頃から鍛錬を積むものの、選手生命は短い。

ムエタイの技術

キック

ムエタイのキックは他の格闘技でも類を見ない破壊力を秘めている。
立ち技最強とされるゆえんである。

ムエタイの回し蹴りは腰を回転させて、全体重をのせ押し込むように放つ。
あるいは足をしならせてムチのように鋭く放つ。
空手のようにコンビネーションを意識した蹴りと違い、確実に相手を破壊するためのキックである。

ムエタイ戦士は日ごろからスネを竹で叩いて硬く鍛えているので、相手のガードの上からでも構わず全力でキックを放つことができる。


ムエタイでは強力なハイキックと肘打ちを警戒して、手を高く構える。

肘打ち


ムエタイで多用される肘打ちも威力が高く危険な技だ。
顎やこめかみにヒットすると一発で勝負がついてしまう。
軌道が多彩なので使いやすい。また相手の額やまぶたをカットして出血で視界をふさぐ目的でも使われる

一方、採点の特性上パンチは軽視されている。

首相撲


ムエタイの選手は「首相撲」と呼ばれる密着状態からの間合いの取り方が非常に上手い。
首相撲で相手を封じたまま肘打ちや膝蹴りをくりだすことができる。

古式ムエタイとの違い

近代ムエタイは20世紀にスポーツ競技として確立されてから、
投げ技・関節技を禁止されたこと、武器を使わないこと、構えが変わったこと、回し蹴りが加わったことなど古式ムエタイから多くの変化が生じている。

武術としての古式ムエタイは、指導者がいなくなり廃れている。
ただしグローブを着けずに戦うタイのムエカッチュアーや、ミャンマーの格闘技ラウェイなどでは比較的、昔のままのスタイルを見ることができる。

ムエタイを使う有名人

ナヒ・カノム・トム

タイの小学校の教科書にも載っている国民的な英雄。

1767年、アユタヤ王朝の首都はビルマ軍によって攻め落とされ、多くの人々が奴隷や囚人となり連行された。
アユタヤの兵士であったナヒ・カノム・トムはビルマの王の前で殺し合いを見せる奴隷となったが、このとき王は「もしビルマの勇者全員に勝ったら、お前を自由の身にしてやろう」と言った。
ナヒ・カノムは見事ビルマの拳士12人を打ち倒し、そして捕虜全員を解放し帰国した。

この活躍が伝説となり、タイでのムエタイ人気が高まり、ムエタイの発展へとつながったとされる。

トニー・ジャー

世界的に活躍するタイのアクション俳優。
主役を務めるアクション映画「マッハ!」シリーズでは古式ムエタイの技を披露している。

ムエタイを使うキャラクター


サガット(ストリートファイター)


アパチャイ・ホパチャイ(史上最強の弟子ケンイチ)


ガオラン・ウォンサワット(ケンガンアシュラ)

ムエタイに関連する武術

カラリパヤット

インドからやってきた達磨大師の伝えた拳法が、中国武術、空手、ムエタイなど多くのアジア拳法の元となったという説がある。

キックボクシング

キックボクシングはムエタイのルールを参考にしてつくられた競技である。
またその技術もムエタイがベースになっている。

ラウェイ

ラウェイはタイの隣国ミャンマーの神聖な国技であり、「ビルマ拳法」「ムエ・カチューア(素手のムエタイ)」とも呼ばれる。
ムエタイと源流を同じくしながらも、グローブは着けず、頭突きや脊髄への攻撃もあり、判定勝ちはなく決着はKOのみなど非常に過激なルールとなっている。

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