少林拳

少林拳(しょうりんけん)は、中国河南省にある嵩山(すうざん)少林寺とその周辺地域で伝えられてきた武術の総称である。

中国で最も歴史の古い武術であり、多くの中国武術に影響を与えたため「天下のクンフー、少林より出ず」と謳われる。

※現在の少林拳は、古来より嵩山少林寺に伝わる武術に加え、その周辺地域で修行されていた洪拳・七星拳・羅漢拳・通背拳などの武術が総合されたものとなっている。

少林拳の成り立ち

少林拳の発祥

496年、中国南北朝時代にあった北魏の皇帝により、嵩山のふもとに少林寺という寺が建てられた。
しかしその時代の寺院は、皇帝の代替わりによって突然打ち壊されたり、世が乱れたら真っ先に襲われるものであったため、軍事や政治の要所である河南の地にあった嵩山少林寺には自衛集団として武装僧が発生した。
この僧たちから生み出された武術が少林拳のはじまりである。

※伝説によれば、インドから渡ってきた達磨(だるま)大師が、少林寺で禅の教えと共にインド武術を伝えたとされている。

621年、唐の皇帝が 鄭(てい)国にさらわれた際、少林寺の僧侶たちが唐軍に協力し、見事な働きで皇帝を救出した。
その後、唐軍と鄭軍が対峙した際も、500人の僧兵が鄭軍の退路を塞ぎ、鄭軍降伏のきっかけを作ったとされる。
皇帝はこの功績を称え、少林寺の僧が武術を訓練し兵力を持つ事を赦し、最も活躍した僧を唐の大将軍に任命した。
このことにより、少林寺はその名を世に広め、武力と権力を強めていった。

僧たちの修業していた武術はやがて門外にも広まり、中国全土の武術に大きな影響を与えた。さらにこれを元にいくつもの拳法が生まれた。

近代少林拳の成立

1966年、毛沢東が発動した文化大革命により多くの寺院が破壊され、書物は燃やされ、武術の訓練は禁じられた。
少林寺内はがらんどうになり、多くの秘伝が失われ、少林拳は衰退した。

1982年、映画『少林寺』が公開されると、中国全土で少林寺ブームが巻き起こった。
少林寺には世界中から観光客が押し寄せ、弟子入りを望む人々で行列ができた。
地元には多くの武術学校が設立されたが、もはや少林拳を教えられる者はほとんどいなかったため、地元の拳法使いたちが教師を務め、正しい少林拳が広められることは無かったという。

1980年代から、中国の国家体育局により少林拳の統一化が推し進められた。
これは全国への普及が目的であり、少林拳の規範を作ることにより、指導者は教えやすく、学生は学びやすくなるというものだった。
しかしこの規格化によって、これまで各流派、各地域が持っていた独自の拳風と思想は消えさった。また少林拳の競技(表演)化によって派手で美しい動きが重視されるようになり、伝統拳は失われつつある。

現在では、嵩山少林寺には中国各地から少年たちが入門し、厳しい修練を積んでいる。

南派少林拳

かつて、中国南部の福建省には南少林寺と言われる寺があった。
白鶴拳・洪家拳・詠春拳などの南派武術と呼ばれる拳法は、南少林寺の拳法から派生したと言われるが、真偽は定かでない。

少林拳の技術

少林拳は拳法の中では北派・外家拳に分類され
飛んだり跳ねたりと、素早く大きな動きが多い。

直線的な軌道の突きや蹴りを使い、動きにはリズムが感じられる。

【套路(型)のうちの一つ 通背拳】

また少林拳には武器術や気功も含まれる。

気功は呼吸法や瞑想などにより体内のエネルギーを高め、病気の治癒や健康維持に役立てるという。

武器術は刀、槍、剣、三節棍、草鎌、など多岐にわたるが、特に(長い棒)がよく用いられる。
棍は少林寺の歴史の中でも戦において活躍してきた武器であり、少林拳にとってなじみが深い。

少林拳はどんな人に向いてる?

まさに”中国拳法”といった雰囲気を感じたい方にお勧め。

演武ではアクロバティックな動きも多いが、実戦での少林拳はシンプルで機能美のある動きで、中高年でも始められる。
少林拳の教室・道場では武器術や気功も教わることが多い。
またカンフー・フィットネスとして少林拳を教えている教室もあり、女性に人気がある。

少林拳を使う有名人

ジェット・リー(1963 – )

中国北京市出身の武術家、俳優。
25歳の時、映画『少林寺』で主役を演じ、中国国内のみならず全世界で一大「少林カンフー」ブームを巻き起こした。
しかし、実際にジェット・リーが修めている武術は少林拳ではなく実戦太極拳であるとされる。

ケイン・コスギ(1974 – )

アメリカ出身の人気俳優。
もともと幼い頃から父ショー・コスギより空手・柔道・テコンドーの英才教育を受けていたが
25歳の時、映画の役作りのため嵩山少林寺で訓練し拳法を会得した。

少林拳を使うキャラクター


阿星(少林サッカー)


レイ・フェイ(バーチャファイター4)

少林拳に関連する武術

カラリパヤット

少林拳の源流はインド武術のカラリパヤットだと言われることもあるが、正確には間違いである。時代から考えて、達磨大師が学んだのはカラリパヤットの前身であるタミル武術だろう。

また一説によると、達磨大師が少林寺で僧に教えたのは、武術ではなく易筋経(体を鍛える健康法)だと考えられている。

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