エスクリマ

エスクリマ(Eskrima)は、フィリピンで発達した伝統武術である。アーニスアルニスカリとも呼ばれる。

ナイフや棒など武器術を中心とした武術であり、その実用性からアメリカの警察や軍の教育にも取り入れられている。
またスポーツ競技化されており、フィリピンの国技として親しまれている。

エスクリマの成り立ち

フィリピン諸島には、部族ごとに様々な武術が存在していた。これらの武術は14世紀ごろから貿易に訪れるようになったアラブ人達から影響をうけたとの説もある。

16世紀、フィリピンはスペインの植民地となる。
現地人は南部からやってくるモロ(イスラム教徒の海賊)の襲撃に対抗するため、スペイン式フェンシング術 エスグリマの訓練を受けた。

この剣術はフィリピン土着の武器術と融合し、エスグリマがなまってエスクリマと呼ばれるようになった。

20世紀、フィリピンがアメリカの植民地となってからは、エスクリマは国内での喧嘩や抗争に用いられるようになった。
剣の技術は身近な棒を使ったものに変わり、中国拳法や柔術の投げ技・関節技が取り入れられた。
そしてフィリピンからの移民により、エスクリマはアメリカにも広められた。

1975年、エスクリマのスポーツ化を目指しエスクリマ・アカデミーが結成され、トーナメントが開催されるようになった。
その後スポーツ競技としての普及は進み、2009年にエスクリマはフィリピンの国技として認められた。

※武術としてのエスクリマは地域や民族ごとに特色があり、それぞれが別の武術と捉えることもできる。
様々な言語の文化や技術が入り混じったため、エスクリマアーニスカリなどいくつもの呼び方があり、同じ意味で使われることもあれば、使い分けられることもある。

エスクリマの技術

エスクリマでは多くの武器術で動きが共通しており、例えば素手での技術が、そのまま棒やナイフなどの武器に応用することができる。

さらに武器を利用して関節技を決めたり、相手の武器を奪う技なども使われる。

エスクリマでは武器を振りかぶるようなことはせず、予備動作の少ないコンパクトな動きが特徴である。
これは海賊に襲われ、足場の悪い船上や林、狭い家屋内などで戦うことを強いられた島民の工夫であると考えられる。

主な武器

エスクリマでは主に6つの武器術が練習される。

シングル・ソード
…片手剣(または棒)の技術。武器を振りながらも、相手の膝に蹴りを放つこともある。

シングル・ダガ
…ナイフ術。空いた方の手で関節技をかけることもある。

プンタ・イ・ダガ
…左手のナイフで防御し、右手の剣で攻撃する二刀流の技術。。

ダブル・スティック
オリシと呼ばれる棒と両手に持って戦う。プンタ・イ・ダガとほぼ同じような技法である。

ドス・マノス
…長刀や長棒、大剣といった両手で扱う武器の技術。

マノ・マノ
…素手で、武器をもった相手を制する技術。関節技や目つぶしなども使われる。

【ナイフテクニック】

エスクリマを使う有名人

ブルース・リー (李小龍)(1940 – 1973)

中国出身の武術家、俳優。ジークンドーの創始者。
リーはフィリピン系アメリカ人の武術家にヌンチャクなどを教わっている。
映画『燃えよドラゴン』ではオリシ(ダブル・スティック)を使い戦うシーンがある。

マッド・デイモン(1970 – )

アメリカの人気俳優。
映画『ボーン・アイデンティティー』など『ボーン』シリーズでエスクリマを披露している。

エスクリマを使うキャラクター


ジョシー・リサール(鉄拳7)


漆葉リンカ(東京ESP)

エスクリマに関連する武術

エスグリマ・クリオーラ

エスグリマ・クリオーラは ガウチョ(南米のカウボーイ)達の間で伝えられたナイフ格闘術。ポンチョを片手に持ち、盾として使用する。
アルゼンチン、ウルグアイ、ブラジル等の南米諸国がスペインの植民地であったころ、スペイン人のフェンシング術 エスグリマが伝わり発達していった。そういった意味ではエスクリマの兄弟と言える。

シラット

東南アジア一帯で発達した武術シラットは、フィリピンでも盛んである。
アメリカ軍・警察では、エスクリマ(カリ)の武器術とシラットの体術を合わせ カリ・シラットとして広く学ばれている。

スポンサーリンク







スポンサーリンク