シラット

シラット(Silat)は東南アジアに広く伝わる伝統的な武術である。
インドネシアではプンチャック(Pentjak)とも呼ばれる。

特にシンガポール、インドネシア、ベトナムなどではスポーツ競技として人気があり、また護身術やエクササイズとして高齢者、女性にも親しまれている。

また、シラットは武道であり、「礼節や他人への思いやりを身に付け、心豊かに生きる」という精神修行の一面も有している。

一方で、殺傷力の高い技術は欧米の軍隊にも取り入れられている。

シラットの成り立ち

シラットは1500年以上前に、マレー群島(現マレーシア・シンガポール・インドネシア・ブルネイ周辺)で発祥したとされているが、文献もほとんど残っておらず詳しい起源は不明である。二千年前の中東で誕生し、東南アジアに伝わったという説もある。


古来、王室の護衛がシラットを修め、また兵士の訓練にも使われていたとされるが
17世紀に入りインドネシアがオランダの植民地になってからは、反乱防止の為にシラットの修練が禁止された。

その後200年ほどシラットは役人の目を逃れながら細々と伝承されるのみであった。しかし第二次大戦中に日本軍がインドネシアを占領した際、日本は東南アジアを白人の手から解放するため現地住民にシラットを推奨した。
日本当局はシラットの各流派の師範を集めて技術の統一を図り、簡潔で習得がしやすい「近代シラット」をまとめあげた。
これは後に、インドネシアが独立戦争を行った際に大々的に利用された。

現在ではシラットは習い事として普及するとともに、競技化され東南アジアにおける人気スポーツとして試合、大会が行われている。

シラットの技術

シラットは地域によって500以上の流派があり、その技術も膨大なものになるため一概に説明することはできないが、ここでは日本軍によって統一された「近代シラット」について述べる。

シラットの特徴は素早く回転の速い動き(手数の多さ)であり、
一呼吸の内にチョップ、掌底、水面蹴りなど次々に繰り出すことができる。

関節技、足払いを多用し相手を地面に引き倒す技が豊富だが
一対一ではなく多人数相手や乱戦を想定しているため寝技はほとんど存在しない。

シラットの極意はの動きにある。肘を巧みに使いこなし、攻撃・防御に多用する



武器術としては、草木が茂る密林でのゲリラ戦のため取り回しの良い小型の武器が多く、短剣暗器による急所への一撃必殺が基本。
都市での護身を目的としたアーバンシラットでは、特にナイフ術が発達している。

↓シラットの主要な武器の一つであるカランビットナイフ


カランビットの使い方解説1
カランビットの使い方解説2

その他にも競技化されていない伝統的シラットでは、こう配があり木々の生い茂るジャングルの地形を活かした技が多く伝わっている。

シラットはどんな人に向いてる?

シラットの動きは元来、ジャングルでのゲリラ戦に特化した暗殺術なので、他の格闘競技に活かすことは難しいが護身やケンカに役立てられるだろう。

近年ではアメリカ軍・警察関係の近接格闘術と交わることで、より近代的に洗練された「カリ・シラット」なども存在するが、日本ではさほど普及しておらず道場も少ない。

日本であまり知られていない武術をやってみたい方や
エスニックな雰囲気が好き、東南アジアの文化に興味がある、という方には良いかもしれない。

[アーバンシラット研究会]

シラットを使うキャラクター


槙島聖護(PSYCHO-PASS)


桜井裕章(喧嘩商売)


シルクァッド・ジュナザード(史上最強の弟子ケンイチ)

シラットに関連する武術

サバット
足技主体のフランスの格闘技。
名前がなんとなく似ているので混同されやすい。

カポイエラ
カポイエラが支配者により弾圧されていた時代、奴隷たちは舞踊の動きにまぎれてこっそりと技術を伝承していた。
そういった経緯は植民地時代のシラットとそっくりである。

スポンサーリンク







スポンサーリンク