中国武術の歴史は古く、その歴史は実に数千年を数える。
武術は命を懸けた争いの中で、常に磨かれ、影響を与えあい、生み出されていった。
現在ではメジャーなものからマイナーなものまで数百種類もの拳法が存在している。
その中でも特に有名なものをいくつか紹介しよう。
詠春拳(えいしゅんけん)
すばやくコンパクトな手技を活かした接近戦を得意とする。
気功などの修練を積まなくてもすぐに強くなれるため、ケンカっ早い若者に人気がある。
ブルース・リーの創始した截拳道(ジークンドー)は、この詠春拳がベースとなっている。
兵器は八斬刀と呼ばれる二刀一対の短剣がよく使われる。
劈掛拳(ひかけん)・劈掛掌(ひかしょう)
体の力を抜き、両手を振り回しながら攻撃する。
劈掛拳は間合いが長いことが特徴。
短い間合いしか持たない八極拳士は、弱点を補うために劈掛拳を同時に習うことが多い。
通背拳(つうはいけん)
テナガザルの動きを模したと言われる拳法。
両腕をムチのように柔らかくしならせ、長い間合いから強力な打撃を放つ。
腕の使い方は劈掛拳に似ている。
通背拳は守りを重視しており、遠い間合いでの攻防を得意とする。
長拳(ちょうけん)
長拳とは 査拳、華拳、弾腿、紅拳、炮拳などの中国北部に伝わる拳法の総称であり、表演(演武大会)の種目の一つでもある。
長拳系の武術は動きが大きくて理解しやすいので、初めて武術に触れる入門者に向いている。遠近の間合いと打撃・投げなどの技法を幅広く抑えており、突出した部分のないプレーンな技術体系とも言える
長拳は動きが派手なため、演武大会でも人気のある種目となっている。
心意六合拳(しんいりくごうけん)
常に前進しながら強力な発勁を打つ、攻撃的で豪快な拳法。
体当たりや頭突きなど体全身を使う技が多く、接近戦に強いことなどが八極拳と共通している。
心意六合拳は形意拳と同じく、心意拳から独自に発展した。
八卦掌(はっけしょう)
あまり拳を握らず、掌(てのひら)での攻撃を多用する拳法。
開手で相手の攻撃を流し、暗勁をたたきこむ、力に頼らない戦法ができるので女性にも人気がある。
蛇のように柔らかい動きで相手にまとわりつきながら、相手の視界の外からの、思いもよらない角度で攻撃をくりだす。
翻子拳(ほんしけん)
動作がとても速く、すばやい拳の連打で相手を打ち崩す。
その様は「両拳は閃電の如し、双拳の密なること雨の如し」と形容される
洪家拳(こうかけん)
中国南派を代表する拳法。洪拳とも呼ばれる。
腰を落とした姿勢から重く鋭い拳打をくり出す
ジャッキー・チェンが得意としており、世界的にも有名な拳法である。
洪家拳をはじめとする南派武術は空手のルーツとされており、実際に空手の技術に大きな影響を与えている。
地功拳(ちこうけん、ちしょうけん)
地面を転げまわりながら戦う変則的な拳法。蹴り技が多くカニばさみも得意。
日本の躰道にも似たアクロバットで変幻自在な動きのため、相手に捕捉されにくい。
[Youtube – 沖縄で地面を転がり宙を飛ぶ拳法を目撃!]
酔拳(すいけん)
“酔えば酔うほど強くなる” とされ映画などで登場する酔拳は架空の拳法である。
ただし中国では、変則的で意表を突くような動きをする型や流派の呼称として「酔拳」が用いられることがある。
酔拳のような重心を固定しない立ち方は、相手の意表を突くほかにも、力みを抜き”居着き”をなくすために有効である。
意拳(いけん)
1920年代に創始された新しい拳法で、中国全土に広まっている。
形意拳などさまざまな拳法を元にしているが、決まった型を持たないことや、站椿(同じ姿勢で立ち続ける鍛錬法)を非常に重視することなど革新的な特徴を持つ。
意拳はその達人たちにより実戦性が証明され、”あらゆる中国武術の粋を集めて大成した拳法”という意味で「大成拳」と呼ばれることもある。
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